コモディティ化市場における、ビジュアルコミュニケーションの役割

消費者視点で眺めると、昨今市場に出回っている製品の機能であったりサービスの差がさほど感じられなくなりました。このような成熟した市場で、私たち視覚伝達を担った専門家にはどのような対応が求められているのでしょうか。
マーケティングでは、コモディティ化市場においての差別化戦略には「ブランディング」と「デザイン」が有効であると言われています。また伝達する私たちは、企業の「ブランド」「製品またはサービス」と「ターゲット市場」を深く理解した上でコミュニケーションの核(USP)を決定することが、消費者側から見た差別化につながると考えます。
これからのビジュアルコミュニケーションは、今まで以上にマーケティングを強く意識したクリエイティブが不可欠ではないでしょうか。マーケティングの4Pのプロモーションという意識を常に持つことが、企業のミッションに的確に応えるために必要です。ヒットした広告だけれど、どんな商品だか覚えてない…などというプロモーションがもう通用しないのは言うまでもありません。

クロスメディアの必要性

これまでもメディアを複合的に組み合わせたコミュニケーション戦略は行われてきましたが、今後はさらにメディアの特性に特化した情報発信が求められると思います。家族そろってお茶の間でテレビを観ていた環境は少なくなり、子供でも携帯電話を持ち、オフィスでは隣に座っている同僚にメールで用件を伝えるような時代です。消費者の購買決定の方法も以前とは大きく変わり、企業の発信する情報より、同じ消費者の意見を参考にする人が多くなっているようです。そういった社会において、企業は従来のコミュニケーション手段のままで情報発信していても、消費者の心を動かすことはできないでしょう。
多くの人たちが同じメディアに長時間接していた時代には、マスメディアを使って発信することが効率的でした。しかし、現代は一人の人が多様なメディアに少しだけ接するという時代です。テレビというメディアは依然絶大な影響力を持っていますが、昔のようにテレビの前に長時間座って時間を過ごすことが少なくなった今、ターゲットの生活行動パターンに合致したメディアを選択し、メディア特性に合わせて情報をモディファイし、複合的なメディアを使って発信することが消費者へのアピールにつながるのです。

これからのクリエイティブ

業界内で、相対的にクリエイティブの質が下がったという声を耳にすることがあります。世の中のサイクルが早くなって、じっくりものづくりができなくなったからでしょうか。ソフトウェアが進歩して、誰もが手軽に制作できるようになったからでしょうか。
私たちは企業からのミッションを受けて仕事に取り組んでいます。仕事が発生した時点で、着地点は決まっています。しかし、着地させる方法はクリエイター毎に様々な違いがあります。PCのない時代に培った多くの引き出しをベースに、現代のPCを武器に戦えば鬼に金棒です。プロダクトアウトに陥らないクリエイターを、これからの時代は求めると信じています。